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眠いほど冴えるのは気のせいじゃない

新年あけましておめでとうございます。
今年も元気に、ちょっとした気づきを拾っていきたいと思います。
おみくじは中吉でした。

さて、年始1発目の投稿は、皆さんもきっと感じたことがある、寝る前になぜか頭が冴えるあの現象についてです。

寝る前に頭が冴える気がして、調べてみた

―― 創造のスイートスポットは本当に「眠りに落ちる直前」にあるのか

「もう寝ないとまずいのに、なぜか今いちばん考えが冴えている気がする」
「日中より、寝る直前のほうがアイデアの芯が見える」

こういう感覚、ありませんか。
少なくとも私は何度もあります。

もしかすると、これは気のせいではなく、脳科学や睡眠研究の世界で説明されているかも、ということで一次文献をあたってみました。

結論から言うと、
「寝る前に冴える感じ」は、気のせいではありませんでした。

これは「睡眠不足が良い」という話ではない

最初に、前提をはっきりさせておきます。

❌ 徹夜・慢性的な寝不足
✅ 眠りに落ちる直前の、短い「うとうと」の時間(入眠期/N1)

私が調べた限り、創造性が高まりやすいとされているのは後者です。

睡眠のどこが「創造のスイートスポット」なのか

flowchart LR
    A[覚醒] --> B[N1<br/>NREM 第1段階(入眠期)]
    B --> C[N2<br/>NREM 第2段階]
    C --> D[N3<br/>NREM 第3段階(徐波睡眠)]
    D --> E[REM 睡眠]
    E --> B

N1(入眠期)とは何か

N1は、覚醒と睡眠のあいだにある短い境界状態です。

  • まだ意識はある
  • 外界への注意が弱まる
  • 思考が少し飛びやすくなる

「入眠期は創造のスイートスポット」という研究

2021年に Science Advances に掲載された研究では、
入眠期(N1)に入った被験者が、最も高い確率で課題の「隠れた規則性」を発見しました。思考の抑制が一時的にゆるみ、発想の組み換えが起きやすくなる可能性が示唆されています。*1

Sleep onset is a creative sweet spot
Lacaux et al., 2021

なぜ、寝る直前だと発想が通りやすくなるのか

内向きの思考が前に出る

N1では、脳の「内側の回路」が前に出やすくなります。
内側の回路(内省・自伝的記憶・連想)が素材を引き出し、実行系の回路(計画・判断・ブレーキ役)がそれを選び直す/組み替える——この連携が強いほど創造的アイデアが増えたと報告されています。*2

REM 睡眠との違い

REM 睡眠は記憶の再構成や概念結合に寄与しますが、
「その場でひらめく」体感とは少し異なります。REM では連想ネットワークが活性化し、既存記憶の結び直しを促すため、即時の洞察より後の創造的再編成に寄与すると示されました。*3

よくある誤解:徹夜は創造性を高めるのか

「徹夜すると天才になる?」→ NO

睡眠不足は認知機能全般を低下させ、注意・作業記憶・実行機能が幅広く悪化するとメタ分析で示されています。*4
N1を意図的にコントロールして短く挟むのと、徹夜は別物です。

参考文献

  1. Lacaux et al. (2021) Sleep onset is a creative sweet spot. Science Advances
    https://doi.org/10.1126/sciadv.abg9707
  2. Beaty et al. (2015) Default and Executive Network Coupling Supports Creative Idea Production. Scientific Reports
    https://doi.org/10.1038/srep10964
  3. Cai et al. (2009) REM sleep improves creativity by priming associative networks. PNAS
    https://doi.org/10.1073/pnas.0900271106
  4. Alhola & Polo-Kantola (2007) Sleep deprivation: Impact on cognitive performance
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19300585/
**濃墨ケケ / kk5123**